• 登山技術研究会アルペンブルーメ|東京都勤労者山岳連盟に加盟する山岳会|岩登り・沢登り・雪山登山が好きなアルパインクラブ|登山の基本技術を研究し指導者を育成する山の会|東京都練馬区を拠点に活動

沢納めは冬の気配 幸丿川

天候に恵まれてほぼ毎週末沢に行っていたら、あっと言う間に10月になってしまった。Y岸家ではそろそろ沢納めの時期である。三連休の後半が仕事なので前倒しで木曜から3日間の休みを取り、奥鬼怒の温泉が流れる沢+避難小屋の2泊3日リゾートの計画を立てた。しかし木曜日に寒冷前線が通過(各地で初冠雪となった)、その後も東日本は悪天予報になってしまい、行き先を変更することに。

東日本と日本海側はダメ、南アルプスは今期2回行ってるしなぁ。中央アルプスの予報を見てみると、金土と晴天だ。予想気温がかなり低いのが懸念点だが…。2週間前に行った木曽駒の沢の下山ルート上にあった素敵な小屋付近に詰め上がる沢をチョイス、リハビリ中なので日帰りコースを小屋泊まりの計画にして決行。

超スローペースのログ…

木曜は木曽駒高原の民宿への移動日とした。中央アルプスや北アルプスでの低温・悪天による遭難のニュースが耳に入り、内心テンションが下がる。朝早いと寒くて沢に入れないだろうから金曜の起床時間は遅めに設定し、木曽駒ヶ岳福島Bコース登山口に8時半に到着。外は寒過ぎて、私は車の中で身支度をした。

車から出て山の方を見ると、高いところの森が粉砂糖をかけたようになっている。気のせいじゃないよねぇ、霧氷だよねアレ…。でも、晴れる予報だから…!

とりあえず8:45に出発。沢登りをする気温じゃないかもなぁ、入渓できなければ福島Bコース往復かなぁ…(それもカッタルイよなぁ…)などとグダグダ考えながら幸丿川沿いの林道をゆく。後で判ったことだが山ちゃんも似たようなことを考えていたそうだ。意地っ張り夫婦か。

入渓点。標高1,600mちょい

45分の歩きで入渓点。直ぐに出てくる大きな堰堤は左から越える。最初の滝が見えてきたところで小休止し、ハーネスを着けていると陽が射してきた。

予報通りの青空!溪の中にも陽光が届いてきた。

上の写真の奥に霧氷が見えてるんだけど、

拡大してみた

スマホのカメラではよく分からないですね。ま、これから気温が上がれば融けるでしょう。

ハーネスを着けて歩きだして30分ほどで、両岸が狭まってきた。

陽が当たってご機嫌なので躊躇わず行く!

うっ…やっぱ冷たい…

標高1,715mくらいで、3段の滝が見えてきた。

1段目の出だしがちょっと悪いのでロープを出す。支点はハーケンになりそうだ。情けないけど私は自信が無い。山ちゃんも私のハーケンを信用出来っこないし…という訳で山ちゃんリード。

滝の下は日陰で身体がどんどん冷えてくるので、ロープを濡らさないよう気を付けつつ踊ったりしながら山ちゃんのコールを待つ。いざフォローで登ろうと岩に取り付くと、手指が氷の如くかじかんでいて感覚がない。登攀力がゼロですわ。騙し騙し何とか登ったけどさ…

二人とも寒さで震え上がっているので、水線から離れたくて2段目からは左の草付へ。大体、さっき確かに照っていたお日様は何処へ行っちゃったの?

草付から見下ろす

巻きながら眺めると3段どころではない連瀑だった。寒くなければ沢の中を楽しく行けただろうに。

標高1,800mに達し、巻き続けると左の支沢に突入してしまうので方向転換。

ヌメりに注意しつつ支沢を横切って、藪を抜けて標高1,815mくらいで本流に復帰。

振り返ると確かに晴天であるのに、我々のいる場所には恩恵が及ばず二人ともガタガタ震えっ放しだ。

うぅ…陽が当たって欲しいよう…

本流の遡行に戻って間もなく、1,835m二股が見えてきた。私達は右へ行くが、左も立派な沢だった。

左俣は避難小屋へ直上する感じ

丁度お昼頃なので二股で休憩にする。絶妙に陽が当たらず、寒くて二人とも食欲が湧かなかったが、ともかく一息入れたことにして右俣へ。最初の滝は、左の草付にジグザグに踏み跡があった。山ちゃんが念の為のロープを出し過ぎる傾向が出てきたので留意する(相手が私だからだってのは分かっているけど)。

この写真の範囲外左側の草付を登った

標高1,890mで出てきた滝は左の壁を登る。一歩二歩が悪いところがあって、ロープを出してもらって助かった。ハーケンの回収に苦労して滑ってしまったが…

私が滑って落ちた感触を受けてナーヴァスになった山ちゃんが続けてもう1ピッチロープを出したが、これは全く不要だった。もう13時なのでこの先は慎重に判断しないといけない。

標高1,930mで、再び落差のある滝が現れた。

ロープを出して左を巻くという山ちゃんを説得してフリーで右壁を登る。寒いので水線から離れ過ぎてしまい、岩が脆くて気を使った。見下ろすとこんな感じ。

その後も滝が続く中で、濡れたくないので草付を巻く場面があったが、巻く人はあまりいないようで足下が悪く、山ちゃんに簡易的に確保してもらいながら登った。

精神的に疲弊してきたが、メボソムシクイが囀ったのには驚かされた。こんなに寒いのにまだいるなんて!いつ南へ帰るのかしらん、などと考えている内に標高2,000m二股に着いた。

左へ行く。水量がだいぶ減ってきた。

相変わらず滝が続くけれど、容易に越えられるものばかりになってきた。

斜度が緩んできた

標高2,160m二股に到着、右へ行く。

振り返ると遥か下方、登山口の広場(駐車場兼キャンプ場になっている)に良く陽が当たっているのが見える。恨めしい…

標高2,200mを越えた。登山道までの標高差は200m、ここまでくればもう大丈夫だろう。

疲れていても食糧採集は怠りません

疲れてヨロけてきているのでトラヴァースでワンポイントだけロープをもらい、あとは一歩一歩登ってゆくのみ。

秋の山ですねぇ

碌に食べていないので完全にシャリバテしていて、ゼーゼーハーハーしながら登る。食欲が失せていても栄養を摂れるような工夫が必要だな、と痛感。福島Aコース(※崩壊箇所があるため2023年10月現在は通行止め)の登山道に出たのは16時20分過ぎ。ザックを下ろして水を汲んだり上着を着たり、念の為ヘッデンを出したり。沢はまだ上へと続いている。紅葉と青空が綺麗だったので写真を撮った。

ん、奥の方に霧氷が見えているような。えっ、日中に融けなかったんだろうか。

登山道には夕陽が射していた。あぁ、なんて安心できるんだろう。

七合目避難小屋まであと少しのところでツララを発見、軽く衝撃。

マジか、寒いわけだわ…

周りも霧氷だらけだった。融けてやしない。

美しいですけどね
うーむ…

17時頃に避難小屋に到着。戸を開けると内部が暖かかったので薪ストーブを使っているのかと思ったら、先客の二人組がガスストーブを使って食事をしているところだった。寒いので1時間頑張ったけど、点けられなかったそうだ。そうですよね、私も点けられません薪ストーブ…。

山ちゃんの指示により、小屋の周りで小枝と中枝を調達。あとは山ちゃんが、冷え切った身体で震えながら火を点けてくれた。薪も割ってくれた。私は何も出来ず見ているだけだった。燠火になるまで時間がかかったが、その後の暖かかったこと…!本当にありがたかった。何時間も薪ストーブの傍に居ながら、少しずつ凍っていた自分が解凍されていくみたいだった。

翌日は下山する前に空身で小屋の裏手の麦草岳に行くつもりだったけど、山ちゃんの膝が良くないので止めた。小屋でのんびりしていると、ポツリポツリと木曽駒ヶ岳へ向かう登山者が小屋に顔を出し始めた。薪ストーブで暖まりながら朝食をとるパーティも。お世話になった薪ストーブを綺麗にしてから8:15に出発。

福島Bコースの登山道をゆく。冠雪した御嶽山が美しかった。少し下りると高さのある針葉樹林に囲まれて展望は望めなくなる。途中、登山道の整備をしている所に行き合った。休憩場所に彼等の荷物がデポされており、木曽地区遭対協の方々であることが判った。七合目避難小屋のノートに彼等が小屋を管理していること、また薪は非常時のみ使うよう記されていたので、せめて御礼だけでも言えたら良かったのにと思っていると、隊員の方が1人休憩場所に降りてこられた。挨拶をして、薪を使ってしまったことを伝え、御礼も言えたので良かった。また来週も上がると言っておられた。感謝です…。

引き続き下りてゆくと、見覚えのある装束が目に入った。なんと、2週間前の沢行で木曽駒ヶ岳からの下山時に一緒だった修験者さんが登ってきたのだ。お互いに大層驚いたことだった。

膝を労りつつゆっくり下り、入渓点に戻ってきたのが10時50分頃。

今日は暖かくてなんかムカつく…

うーむ、今日の方が陽射しが暖かく快適に登れそうだな。まぁ、天気ばかりは仕方がない。ノロノロと林道を歩いて車に到着。

膝リハビリ中で今期あまり沢に行けなかった山ちゃんだが、やっぱり肝心な時に凄く頼りになるベテランだなぁと改めて思った。私は数だけは行っているけどまだまだ判断が甘い。でも成長しているところもあって、山ちゃんと対等には行けないけど、以前よりはロープもいらなくなって手がかからなくなったかな~と思っている。今度は夏に来てみたいね、と話しながら帰路についた。

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