クラックリード奮戦記(2)〜ワイドはつらいよ〜

ハイシーズン突入の城ヶ崎、師走２週目の日曜日はフナムシロックへ。岩場に差し掛かると、八幡野に泊まったメンバー達が既に登り始めているのが見えた。よし、一番易しい「初孫」から行くか…と歩みを進めようとすると、手前の「パープルシャドウ」にトップロープが。今日、初めてご一緒するバリバリの沢の会の先輩方が登っているところだった。

Ｈちゃんが「カッコ良いんだよ、登りたい」と言っていたので名前を覚えていたこのルート。間近に見ると出だしがツルンとしたコーナークラックで後半はハング、確かに見栄えがする。折角なので登らせて貰ったら？と大師匠。難しそうだから朝イチでどうかな…でもトップロープだし、良い機会だから登らせていただいちゃおう！

ダメ元で登ってみたら、私のハンドジャムにジャストサイズのクラックで意外なほど安心して登れた。勇気さえあれば、きっとリードできると思う。次の機会には挑戦しようと思った。

さて、みんながいる方へ。

先輩が「オバステ正宗 5.8」にトップロープを張って下さった。登ってみると、同じ5.8でもこちらの方がずっと難しい。バランシーで面白いルートだが、今の自分にはリードは厳しい。

さぁ、そろそろリードしないと。初孫はパスして「鬼ごろし 5.7」にトライ。７月に来た時、Ｈちゃんが「このルートのリード初めてだよ、緊張する」といいながら頑張ってトップロープを張ってくれたっけ。あの時、私はまだ疑似リードしてからのリードが精一杯で、Ｈちゃんが眩しく見えたんだ。

例によって私にとって少〜し難しいルートなので、途中にある小さなテラスに立って精神を立て直して、リード完了。だが本当は、このテラスを使わないのが良い登り方なのだそう。私はテラスが無ければ厳しかった。先輩方は見事に限定ムーヴで登っていったが、うーん難しそう。ハンドジャムと重心の位置が肝かなぁ。

疲れたので昼食休憩をとって、ついでにのんびりトイレ休憩も行って、戻ってくると先輩が「大師匠がネッシーのリードしてって言ってるよ」と。エッ？

今朝からちょっと風邪気味の大師匠。微熱が出てきたのか関節が痛みだし、今日のお目当てのワイド「ネッシー 5.8」のリードを私がすることになってしまったのだと〜〜！？

さすがにキレイなリードは期待されておらず、核心部では決めたカムにテンションして休みながらで良いから！というお許し付き(？)でのトライ。そういう事なら、と取り付いてみるが、悲しいかな離陸が出来ません。良き所に手が届くまでに、背が小さいので何プロセスか余計に必要なのだが、ハンドジャムが甘い上にスタンスが微かでどうにも…。仕方がないので私が届かないところにカムを入れてもらって(情けなや)再トライ。

他力本願で離陸したら、核心は上部のワイド。バック＆フットサイズのセクションは決して長くないのだが、私はトップロープでもバック＆フットは怖いくらいなので精神的にしんどい。５番と４番のカムを入れながら行くのだが、何しろ５番は持つのも初めて(借り物)、自分の４番は外岩で使うのが初めてである。４番が二つあれば安心だろうとのアドヴァイスで１本、お借りして腰にぶら下げて来たけど、肝心な時に私の４番の方が調子が悪くて動かないではないですか。

一度も使っていない箱入りカムの筈なのに何故動かないのよ～、と涙目で見つめてみてもどうにもならない。「カム錆びて〜…」なんて万葉の世界に逃避してる場合でもない。大体バック＆フットは休めるってみんな言うけどさ、自分がいつまで突っ張っていられるか自信がないんだよ！

結局、精神的に負けてカムにテンション。テンションしながら各駅停車の旅。八高線リードとでも名付けようか。そんなこんなで右のカンテを取ったら辛く苦しいセクションは終了。でも曲がりなりにもリードして来てしまったので終了点を作らなくてはいけない。ボルトはあるのでバックアップにして、メインは複数のスモールカムで。実はカムで支点を作るのは初体験である。自分が決めたカムでロワーダウンする恐怖で強張っていたら、辛抱強い大師匠がとうとう「まーだー〜？」

その後、私が張ったトップロープで登ってくれた第一号はエミコリン。ありがとう。問題なくて本当に良かった…。先輩方も登ってムーヴを解いて下さった。次に機会があったら、少しはマシに登ってみたいものです。

大師匠、エミコリン、先輩方、本当にありがとうございました。延々とビレイさせてしまって申し訳ありませんでした。大師匠、風邪をなおして早く元気になってね！

最後に、動かなかった４番のカムについて。新品未使用なのだからトラブルのあろう筈が無いと思い込んでいたのだけど、何度も海辺に持参している上に動かしていないので、ものの見事に錆び付いていたという訳でした。安全に関わる物なのだからメンテナンスと動作チェックは必須でしたね。反省しきり。もし、もっとシリアスな場面で動かなかったら大変ですから。

いみじうおそろし。