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12/9 日和田で岩トレ&ミーティング

 2023年12月9日(土)日和田山の岩場で岩トレ&ミーティング。メンバーはS枝、Tナ、U住、N澤、N山、M崎の6名。ミーティングは寒いし、早めに帰りたいという方もいたので、高麗駅前で簡単に行いました。

 今回の岩トレは、雪山シーズン前に行っておきたいアイゼントレ(岩場の上り下り)。今回は経験者だけなので、トレーニングはそこそこに、指導のポイントをまとめてみました。

アイゼンを選ぶポイント

 アイゼンは前爪のある一般縦走用を選べば良いですが、装着方法は3種類あり(ワンタッチ、セミワンタッチ、ベルト)、それぞれフィット感が多少違うようです。しかし、正しく調節されていれば大した違いではないので、登山靴との相性を最優先に選んで良いと思います。新しく購入する場合は、登山靴を持参して、店員と一緒に選ぶと間違いが無いでしょう。ついでに正しい装着方法も確認してください。

 次に、前から2列目の歯の向き。短めで下に向いている物と、長めで前に向いている物とがあります。前者は比較的に岩場向き、後者は比較的に氷雪向きということになります。しかしテクニックでカバーできる範ちゅうなので、一般縦走用として2種類そろえる必要はありません。。好みで選んでもらって良いと思います(アイスクライミング用はまた別物です)。

アイゼンの調整

 アイゼンの爪は使っている間に削れて丸くなりますが、写真の程度では問題ありません(アイスクライミング用はまた別)。むやみに研ぐと焼入れがとれ、ますます摩耗します。アイゼンを研ぐより、歩き方のテクニックを磨きましょう。

 次にトゥベイル(ワンタッチ式で前のコバに引っ掛ける金具)の位置を変えられるモデルがあります。手前の穴にセットすると(写真左)、その分だけ靴の先端から爪が前に出るので、2列目の爪を積極的に雪面に突き刺す使い方に適しています。逆にセットすると(写真右)、靴の先端から前に出る爪の長さが短くなるので、岩場等で長い爪が邪魔と感じる方に向いています。ただし、位置を変えるにはコツがいるし、アイゼンのサイズも変わってくるので、山行中に頻繁に変えるものではありません。練習の時などに使い勝手を試しておいて、最適な位置にセットしておくと良いでしょう。

 トゥベイルの位置を変えた時でなくてもサイズ調整が必要な場合もあります。買ったときに店員が調整したとしても、寒いところでは硬すぎて装着できなかったり、逆に緩すぎて頻繁に外れるよう様な場合は、自分で調整しなければいけません。最近のアイゼンは工具を使わずに簡単にサイズ変更できますが(写真左)、ヒールレバーのところにあるダイヤルで微調整することを知らない方もいたりします(写真右)。微調整にはドライバーが必要な場合もあるので確認しておきましょう。

 まれにですが、アイゼンの左右を間違えて装着する方もいます。装着した後では分かりずらいのですが、ストラップのバックルが外側にあるかどうかで見分けられます。バックルの位置は外側が正しいのですが、前過ぎたり、逆に後ろ過ぎたりすると止めずらいです。自分が丁度良いと思う位置に直しておきましょう。

 ストラップは邪魔にならない長さに切っておいて下さい。ただし寒い環境で手袋を着けたまま装着できるだけの長さは必要です。切ったところが解れてくると装着しにくいので、ライター等の熱で溶かしておきましょう。

 ストラップは登山用品店でも切ってくれますが、たいがいは遠慮して長くなりがちです。そんな場合には、自分で踏みつけたりしないように末端処理が必要です。いろいろと作法がありますが、途中で緩まないことが第一です。

 最後にヒールレバーが正しい位置(コバ)にかかっていない例が多々あります(写真左)。これでは確実に外れてしまします。トゥベイルは自分でも確認しやすいのですが、ヒールレバーは装着する度にリーダーまたはパートナーが確認するようにして下さい。

フォームとフットワーク

 足の置き方は、岩に正対して、前爪でのエッジングが基本(2列目以後の爪は使わない)。突起した岩を前爪と2列目とで、あるいわ3列目とで包み込むように乗せることもありますが、易しいので敢えて練習する必要はありません。スメアリングは全く期待できないので、踵を落としてはいけません(水平か、やや上げ気味)。広く平らな岩に足全体を乗せることもありますが、重心が鉛直線上になくてはなりません。これも敢えて練習する必要はありません。

 練習すべきは前爪の掛かるカチホールド(ポケットでも良い)を見つけ、安定した姿勢で立ちこむことです。意外と小さなホールドでも立つことができますが、その限界を確かめることも大事です(小さい岩は欠けやすい)。ホールドを見ようとしないで、闇雲にガリガリやって、引っ掛かったところに立つというのでは効率が悪いし、見ている方も心臓に悪いです。

 ホールドの形状によっては、2列目の爪が岩にあたってしまうこともあります。その場合、踵を少し上げて、2列目をホールドから離してから立ちこんで下さい。

 踵を上げるとリーチも伸びるので良いことだけのようだが、上げ過ぎると、今度は靴の先端が岩に当たってしまうし、気を付けないと、重心線が前爪から外れてスリップしやすくなります。特に重心を乗せた状態で踵を上下させるのは禁物です。重心が反対の足にあるうちに、次に乗り込むホールドと踵の位置を決めておくことが大事です。

 上体は起こして壁から離すとフットホールドが見えやすいし、腕の負担も軽くて済みます(写真左)。逆に手でしがみつくと、足元は見えないし、腕の負担も大きいです。何より重心線が前爪からずれてしまうので、ホールドから外れやすくなってしまいます。

 重心線が常に前爪の鉛直線と重なるように立つことで、安定した姿勢を保つことができます。膝をついても良いし(手が離せる)、踵が上がっていても大丈夫です(踵を動かしてはいけません)。前爪1本でもOKです(2本の方が安定するが、そこに拘ると使えるホールドが制限されるし、膝にも無理がかかります)。

 前爪1本で良いからと、重心を乗せた状態で踵を振ってはいけません。踵を左右に振ることは、上下に動かしたとき以上に外れやすいです。フリークライミングの勢いでムーブを起こそうと踵を振るのは厳禁です。どうしても向きを変える必要がある場合は、いったん反対側の足に重心を移してから、必要な向きに乗せ直してください。

トラバース

 フォームとフットワークの基本を理解してもらえたら、三点支持の重心移動を練習します。

先ずはトラバースから。トラバースの基本は送り手送り足。手はクロスさせても良いと思いますが、足をクロスさせると引っ掛けやすいです。慣れていない方は地面で手順を覚えるだけでも、実際のトラバースに役立ちます。写真は地面に両足で立っているので、実際の重心の位置は必ずしも正しくはありません。

①左手頂点の三角形(三点支持)で右手を右足の外に送った状態からスタート。

②右足頂点(重心)の逆三角形で左足を寄せる(左手と右手の内側)。

③左足頂点(重心)の逆三角形で右足を送る(右手の外側)。

④右手頂点の三角形(青)に重心移動して…

⑤左手を寄せる(左足と右足の内側)。

⑥左手頂点の三角形に体重移動して、右手を送り(右足の外)、①スタートに戻る。写真⑥の場合、右足の外まで送られていないので、一旦つないで更に送るか、再度左手を寄せてから送り直す必要があります。

 では掛け声。ハイ(左)足寄せて(内)、(右)足送る(外)。(左)手寄せて(内)、(右)手送る(外)。足寄せて、足送る。手寄せて、手送る。足寄せて…

登り方

 次にトップロープで岩場(スラブの傾斜)での登り方と下り方を練習します。登り方は大概の方が慣れているので自由に登ってもらって良いのですが、中には手順を気にしてフォームとフットワークがおろそかになってしまう方もいます。そんな時には、送り手送り足の縦バージョン(上げたい手と同じ側の足を先に上げる)の掛け声を掛けてあげます。ハイ右足上げて、右手上げる。左足上げて左手上げる。右足上げて…。

下り方

 下り方は、登り方に比べて苦手とされている方も多いので、もう少し丁寧に練習しましょう。苦手とする原因は足元が見えにくいということが大きいと思われます。そこで、足元を良く見るコツは、下ろしたい足と同じ側の手を先に下ろすことです。つまり登るときの掛け声と逆の動きです。ハイ左手下げて、左足下げる。右手下げて、右足下げる。左手下げて…。

 足元を見やすく…というだけなら先の掛け声で十分ですが、少し傾斜が増してくると問題があります。①右手頂点の三角形(三点支持)で、②左手をを左足近くに下ろすし(下にプッシュ)、③右手頂点の三角形(赤)から同じ右手頂点の三角形(青)に体重移動して左足を下ろすわけですが、これまでの掛け声通りだと、次につながりません。つまり次に右手を右足に寄せて、左手頂点の三角形(三点支持)を作ろうとすると、左手がプッシュのままでは都合が悪いです。それを解決するには、ひと手間加えなければいけません(左手を順手にもどす)。詳しくは(その2)をご覧下さい。

岩場を登ってみる

 掛け声を掛けなくてもできるようになったら(いつまでも掛けていたら恥ずかしい)、少し長いルートで練習しましょう。

 Ⅲ級程度までのグレードで良いのですが、いつも良い位置にホールドがあるわけではありません。掛け声(基本的な手順)に拘らないで、フォームとフットワークが乱れないことに集中しましょう。下りもロワーダウンではもったいないので、ダウンクライミングしてください。多少テンション気味でもかまわないので、腰をしっかり落として、足元を良く確認することに集中してください。

 冬期登攀を目指す方はⅣ級程度のリードができるようになっておくと良いでしょう。ただし、これ以上は全員が練習する必要はありません。これまで以上に個人の自覚と責任が求められます。

おしまい。

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