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4/14 日和田山の岩場

2014年4月14日(日) 日和田山の岩場で岩トレ&ミーティング。

 メンバーはTナ、Y崎、HS川、I黒の4名。本日のお題は、懸垂下降のセット方法。

まずはデバイスを落とさないように注意

 懸垂下降は使い慣れたビレイデバイスで行います。そして、いつもビレイしている時と同じようにセットします(一部のモデルでは別)。つまり普段からビレイデバイスを落とさないように気を付けましょう。

 ビレイデバイスは専用のカラビナといつもセットで持ち歩きます。ゲートを開く時には、常にナローエンド(狭い方)に移動させます。

 デバイスをカラビナから外さなければ、落とすリスクが減るばかりでなく、ゲートの向きやデバイスの上下で悩むことは無くなります(いつも同じ向きにセットされるはずです)。ゲートの向きは利き手の反対側がお勧めです。

ロープのセット時とリセット時が特に落としやすい。

 デバイスはロープのセット時とリセット時に落としやすいので気を付けましょう(なぜならゲートを開くから)。デバイスをカラビナから外してセットするのは論外です。セットの方法は、普通にビレイする時と同じなので(普通は1本が2本になるだけ)、日頃から常に気を付けて下さい。

 ここでAB方式を紹介します。カラビナのスパイン側の手で、スパインとデバイスをしっかり持ちます。AB方式では、指でゲートを開かないので、ナローエンド側に移動する必要はありません。

 指でゲートを開かずにロープを押し込みます(ゲートが逃げないようにスパインをしっかり握る)。ロープがゲートの隙間を塞いでいるので、デバイスがゲートを飛び出すリスクは、ほぼありません(ゲートが開いている限りリスクがゼロとは言えないので、念のためデバイスは押さえておきましょう。

 リセット時もロープを押し込むだけ(ロックは外しておきます)。

 AB方式の欠点は、オートロック式のゲートに対応できないこと。そこさえ気にならなければ、お勧めです。他の方法でも構わないので、普段から(懸垂だけでなくビレイの時も)癖にしておきましょう。

練習はセルフビレイにぶら下がって始めます

 立っていられる場所でセットするだけなら外岩で練習する必要はありません(トップロープのビレイができる方なら、誰でもできるはずです)。

 いつも広いテラスでセットできるとは限りません。たとえ良い足場であったとしても、セルフビレイは弛ませないが原則です(アンカーが信頼できない場合は別)。必ずアンカーの強度を確認してから、セルフビレイに荷重して練習します。

 先に述べたように、セットするだけならだれでもできます(目を離して良いという意味ではない)。問題はセルフビレイからロープに荷重移動して、セルフビレイを解除するところ。動作はトップロープの取り込みと同じなので単純ですが、自分自身を引き上げなくてはいけないので、パワーとコツが必要です(立っていられるところで練習しても意味が無い)。傾斜の緩い斜面であれば、これだけでも登り返しができるようになるので、真面目に練習しておいて損はありません。

話はそれますがブレーキのかけ方

 諸説ありますが、AB方式ではデバイスの下を(デバイスから離して)両手で持ちます。

 両手でブレーキストランドを握るのはロワーダウンと同じだからです。ビレイをしっかり練習した方なら自然とできるはずです。上体を斜に構えないのでロープの流れも自然だし(キンクしにくい)、鉛直に降りているかどうかも確認しやすいです。また、左右どちら側からでも下方の様子を確認できます。ロープは跨ぐことになりますが、その方が腿に巻き付ける仮固定に入りやすいし、斜め懸垂を終えてリセットしたときに、不意にロープが手元から離れるリスクもある程度防げます(完全ではないので他の手段も必要)。

 良いこと尽くめのようですが、ロープの自重で流れが悪い場合、片手でロープを持ち上げて、もう片方の手でブレーキを掛けます。その場合は、ロープを跨いでいては都合が悪いので脇に出します(ブレーキを担う手の位置は動かさない)。ブレーキを担う手がロープを持ち上げると、どうしてもギクシャクした動きになり、アンカーに余計な衝撃を与えてしまいます。この点においてもデバイスの下を両手で持つことの方が優位です(どうしてもデバイスの上を持たないとバランスの悪い方はチェストハーネスとの併用も考えましょう)。

 ギクシャクしてしまうことが癖になってしまっている方は、ブレーキを担う手(上の手)の脇を絞め、絶対に体から離さないということを強く意識することで矯正しましょう。

壁の歩き方

 手の動きがロワーダウン(ビレイヤー)と同じように、足の動きもロワーダウン(クライマー)と同じです。一般的には、足を突っ張って後ろ向きで歩くようにということですが、傾斜が急に変わるところではそうもいきません。ジムではリップを乗り越えるような壁をあまり見かけないので、外岩(ゲレンデ)で練習しておきましょう。

 暖傾斜から急に垂壁に変わる場所では、無理に膝を伸ばしたまま下り続けるとバランスを崩しやすいです(普通は怖くて足が出せなくなる)。そのような場所では無理せずにしゃがんで(膝をついても良い)、上体を壁に近づけます。次に片手を岩に突いて(もう片方の手はブレーキストランド)、同じ側の足をおろします(三点支持の要領)。ブレーキストランドの手を替え、同じ要領でもう片方の足も下ろします。ハングしていて先に下ろした足が掛からないと難しいので、垂壁で十分に練習しておきましょう。 

さらに話はそれて仮固定

 日和田山の岩場での懸垂下降には仮固定が必須なので(懸垂ポイントから下の様子が見えないので、一旦テラスの縁まで移動してからロープを垂らす必要がある)、仮固定もおさらいしておきます。

 とりあえずはAB方式。片手(ゲート側)でロック。

 カラビナの中からロープを抜き出して…、

 スパインにミュールノット。

 さらに、デバイスより上にクローブヒッチで出来上がり。

おまけにバックアップ

 フリクションヒッチはロープとの相性などから、ある程度の経験を積まないと難しいので、初心者に対しては、経験者が先に下りてロープをコントロールする方法をとっています。なのでフリクションヒッチは、登り返し等のセルフレスキューを練習する際に覚えてもらうことにしています。けどまあ、おまけだから…。

 フリクションヒッチ用のスリングは、直径7㎜×長さ3mのプルージックコードを半分(1.5m)に切って2本、ダブルフィッシャーマンズノットで自作することを勧めています。それをブリッジプルージックで巻き付け、さらにオーバーハンドノットを作って長さ調整を行います。

 デバイスをセットする前に効き具合を確認しておきましょう。信頼出来たら一旦ロープを弛ませて、プルージックの上にビレイデバイスをセットします。

 デバイスはプルージックから離す必要があるので(最低一握り分以上)、環付きヌンチャク(スリングの長さは16㎝程度)を使ってビレイループに連結します(ボルト側のカラビナをデバイス専用カラビナに替えておく)。

 環付きヌンチャクのスリングが長すぎると、荷重移動が面倒なので気を付けてください。荷重がロープに移ったらセルフビレイを外します。

 セルフビレイを外した時点ではバックアップが機能していないので、バックアップの位置までは普通に下ります。バックアップは握らずに、小指をあてて押し下げます。

 手を離せばバックアップが効いて止まれるはずですが、念のために片手はブレーキストランドを掴んでいてください。

 どうしても両手を他の作業に使いたい場合は、バックアップの下にスリップノットを作っておきましょう(ロープの自重で解けないようにカラビナを掛けておけば安心です)。

やっと本題に戻って、懸垂下降のセットの仕上げ

 基本は、どの様な場合でも正面でセットしましょう(間違いが少ない)。

 自分より低い位置のアンカーにセルフビレイをセットするのは墜落係数が大きいので、わずかな墜落でも、思っている以上にダメージが大きいです。絶対に止めましょう。

 必ず高い位置にアンカーを求めて、それを頼って慎重にアプローチしましょう。場合によっては懸垂下降によるアプローチも必要になります。マルチピッチでは必須なので、普段から億劫がらずに練習しておきましょう(トップロープのセット等)。

 どんなに足場が悪くても、必ず正対して、落ち着いてセットしてください。場合によっては人工的な手段が必要になりますが、それはまたセルフレスキューのときに練習しましょう。

 時間なので、今回はこれまで。

 岩トレの後は真面目にミーティング。お疲れ様でした。

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