• 登山技術研究会アルペンブルーメ|東京都勤労者山岳連盟に加盟する山岳会|岩登り・沢登り・雪山登山が好きなアルパインクラブ|登山の基本技術を研究し指導者を育成する山の会|東京都練馬区を拠点に活動

若草萌ゆる二子山中央稜

好天予報で期待大な4月下旬の土曜。西は湘南、東は柏から、早朝5時に我が最寄り駅に駆けつけてくれた2人を乗せて、カローラで小鹿野町へ。少しずつ明度を増してゆく青空には雲一つなく、芽吹きの淡い緑と桜に彩られた山々を眺めながらのドライブは気分爽快。登山口の駐車場には数台の車しかなかったのが、我々が支度をしている間に続々と後続が到着し直ぐにいっぱいになってしまった。7時半前に歩き出し、取付には20分弱で到着。

先行パーティが1ピッチ目の上部を登っているのが見えた。のんびりと支度をしながら待つ。快晴なのだが風が強く、じっとしていると寒い。2日前の雨の影響は無く、岩は完全に乾いていて良いコンディション。全員初見、慣れない石灰岩の岩質にいささか尻込む雰囲気の中、いつも勇敢なG氏がリードを申し出てくれた。

1ピッチ目、8:15頃スタート。グレードより難しく感じると言いながら慎重に登っていったG氏に続いてフォローで登ってみると、右手のでっかいフレークと岩壁の間に決めたカムを回収してから右上バンドに登り上がる時にかなり緊張感があった。朝イチのリードは怖いだろうと思った。3番手のY氏は186cmの偉丈夫だけあって、労せずササッと登ってきたけどね。

次のピッチは私かな~…なんて思いながら見上げていたルートが左下の写真だが、「入門レベルのルートを登ろうとしてるんだから、見れば分かるでしょ。」と三つ峠の中央カンテで大師匠に言われたのを思い出して、気が付いた。

2ピッチ目、私リードで9:10頃スタート。ちゃんと身の丈に合ったグレードのルートに取り付いたのだが、出だしから変なところに打たれたハーケンに誘われ右に寄り過ぎてしまい、行き詰まる。冷や冷やしながら方向修正。しばらく登った後、今度は左へ行き過ぎて手がかりの乏しいスラブを目の前に困惑。でも先程と同様に方向修正すれば解決する筈だ。無理せず右へ戻ると、果たしてガバガバ・カンテが終了点へと導いてくれた。

後続をビレイしながら3ピッチ目を眺めていると、右往左往した2ピッチ目に比べて顕著なクラックで分かり易そうだな〜…と思えてきた。岩質には慣れてきたし、そんなに傾斜もキツくなさそうだし、面白そうじゃん?なんて…上天気が誘うのか、クラックが誘うのか。

Y氏にリードするか尋ねてみたが、クラックはあまり慣れていないので…とのことだったので、うーむ。結局G氏がリーダーに花を持たせてくれたという事なのだろうが、その場の流れで私がリードさせてもらうことになった。

大テラスでこの眺めが待っている

3ピッチ目、写真が無いのでスタート時間分からず。出だしから暫くは、見た目通りに易しい。傾斜が立ってくるにつれ少しずつ難しくなってくるが、いつものようにジャミング、カムセットで落ち着きながら進んで行く。すると、とっても傾斜が立ってきた。あ〜、スタート地点からこの状況は見えなかったね、これ核心ですね!

ちょい広めのコーナークラック、右の垂壁(垂壁は言い過ぎ?でもそう見えたのよ)には露骨にお助けスリングが垂れている。攻略法を悩んでいる間、立っているのがシンドくて一瞬だけヌンチャクを掴んでしまった。あぁ悔しい。でも、掴んで登ってはおりません…!

クラックの奥にシンハンド、カムも入れて。左足首ツイストでフットジャム。左腕突っ込んで肘や肩を押し付けて耐えて、ボルトが無いので必死にカムセット。レイバックを混じえながら、右壁の薄いホールド・スタンスを拾って身体を上げていく。とても怖いけど、お助けスリングは意地でも触らない。石灰岩の造形の妙で天然のピトンホール状になっているところにはスリングをタイオフ。相当細いやつにもタイオフして、ほとんど神社のおみくじじゃねぇかって感じだけど、無いより勇気が出るのは確か。何しろギリギリだったから。

どうやら核心を超えられたようだ。嬉しくなってきて独り言爆発。長かったピッチの最後に念の為の4番カムを入れて、大テラスに乗り上がろうというところで目の前に可憐なスミレが2輪。

後続を上げた後、記念に撮影

大テラスの立ち木にセルフを取って、ロープを引き上げていると達成感が込み上げてきた。怖かったけど、落ちずに登ってこられて良かった…!南沢大滝をリードした時と同じくらいの充実感があった。

フォローのビレイを終えたら、広々としたテラスで大休止。時折強風が吹き付けてくるのは相変わらずだが、日向ぼっこしながらクライミングシューズを脱いでリラックス。

おー、ローソク岩が下に見えるようになった!

休息と腹拵えも済ませて、4ピッチ目はY氏リードで11:35頃スタート。

短いピッチで、最後にテラスの手前で右手フレーク掴んでエイヤッと登るところが少し怖い。

物足りないY氏が継続で、5ピッチ目は正午頃にスタート。少し上がったら左にトラヴァースし、クラックにプロテクションを取りながら登って行った。さて私の番になったが、左にトラヴァースが…できない。技が足りないのは認めるけど、何ってったって丈が足りない。幸い右側のロープに繋がっていたので、トラヴァースを諦めて右側から登った。もしリードだったら右ルートでプロテクションが取れたかどうか?もう忘れてしまったが。

6ピッチ目、ウィークデーの激務からの睡魔に襲われていたG氏が辞退したので再び私リード。スタートは12:45頃だろうか。ひと登りして小テラスに上がったら方向を変えてもうひと登り、2段構えの簡単なルート。多少ボルトに惑わされるのと、ロープの流れに少し気を使ったぐらい。

時折、採石場からの破砕音が響いていた。写真左上に粉塵が見えている

最終の7ピッチ目はロープを出さなくても良いところだが、お疲れ気味のG氏が「ここぐらいは…」と言ってロープを引いていった。13時半前にスタート、最後なのでワイワイ楽しく。

13:50頃、全ピッチ無事に終了。ロープを解いて大休憩とする。後半ピッチから足指が痛くなっていたので、裸足になって行動食を齧っていると後続パーティが上がってきた。3人登りなのでお待たせしてしまったと思います、すみませんでした。

アプローチシューズに履き替えて14:15出発。山頂に行きたがるメンバーはいなかったので、後は登山道を降りるだけだから気楽なモンだと思いながら歩いてゆくと、物凄い急降下ルートになっておったまげた。期せずしてクライ厶ダウンの良い練習ができたくらい急峻な下山ルートだったので、所要時間は短く14:33には駐車場に着いてしまった。

万が一行き詰まっても絶対に助けてもらえる強力な2人と一緒だったから、勇気を出して充実したクライミングをすることができたと思う。見守ってくれてありがとう!またマルチピッチ、行きたいね。

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