日曜の朝、まだ仄暗い空には薄っすらと雲がかかっていた。コンビニで朝食をとってから神津牧場へ向かう。途中、荒船山の大岩壁の眺めを楽しんで、到着した広い駐車場には一台の車もなし。雪は少ないのではなく皆無で、地面は乾き切っており足下から土埃が立つほど。こんなに乾燥していて本当に氷があるのか心配になる。氷瀑の掛かる谷へと降りてゆく、転げ落ちそうなほど急なトレイルにはロープがフィックスされていて、中ほどにある1本は以前に大師匠が設置したもの。下降の途中、対岸の急峻なルンゼの上から下まで氷が張り付いているのが見えた。
まずは入門砦で、みんなで存分にリード練習しよう。この滝は高さが無いので、気楽にトライできるのが良い。
2人に続いて私。登り始めて直ぐ、大師匠の「身体が縮こまっているなぁ」というコメントが耳に入る。昨日もそうだったのだろうが、自覚がないのだ。リードの怖さがそのまま姿勢に反映されるのだろう。意識して脚、腰を伸ばさなくては。私の地獄耳に気付いた大師匠が、続けてアックスの振り方についても助言を下さる。
私がアックスを振る時、肘が曲がっていて身体の横に出ている。そして手首のスナップが全くない、と。
アックスを打ち込む腕が身体の横に出ていると、重心から外れた、手先だけの弱い動作になってしまう。身体の前で振るように意識し、高いところを狙い、打ち込む時に腕が伸びているように。そうすることで、腕全体の重さだけでなく、上半身の力もアックスに伝えることができるのだ。
手首のスナップについては、昨シーズンも散々指摘されたことなのに。スポーツ経験ゼロだからかも知れないが、完全に身体の記憶から抜け落ちてしまっているみたいだ。「ヴァイオリンで手首使わないの?」と言われても、動かす角度が違い過ぎるしなぁ。何しろ、手首を固めたまま肘から先でチョコチョコとアックスを振っているから、打ち込みが弱々しいことこの上ない。同じ女子でもMちゃんと全然強さが違うと言われて、そうなの!?と結構凹む。音が全然違うのだそうだ。
無意識に固めていた手首の力を抜いて柔らかくすると、手首を起点にした円運動で勢い良くアックスのヘッドを氷に打ち込むことができる。「ドンッ」という音がした。今までは「カシッ」という音だったから、全然違う。うん、少しコツが掴めたかも知れない。ノーコンなのは、また別の問題だが…
入門砦は、短いが部分的に垂直なところもあり、そしてコンディションは小さなツララの集合体であったので、どうアックスを打ち込むか、スタンスをどう確保するか、スクリューはどのような場所に設置すれば良いか試すのに丁度良かった。
・アックスは、細いツララに打ち込んでも崩れてしまうので、枝分かれしているツララの根本を狙うと良い。
・スタンスは、不安定な細かいツララは蹴って落として、残った氷は比較的しっかりしているので、そこに前爪を乗せる or 前爪でスタンスを作って押し込む。
・スクリューも、繊細なツララなどはアックスの背である程度落としてしまって、比較的しっかりした氷を出して設置すると良い。条件の悪いところにしか設置できなければ、次のスクリューを間隔を開け過ぎずに打つ。
初めてのことで、短いとは言えリードでやるのは怖くて、ついつい既にある凹凸を使ってしまった。この後、一度トップロープで試してみたら要領が分かったので、次回はもっと勇気を出せたら良いな。
今日のフィナーレは、ラスボスがいそうな洞窟を征服する大師匠。洞窟の入り口にカーテンの如く垂れ下がっているツララを壊さないよう慎重にスタンスとして使って、抜けて行った。午後に行こうかと思っていたインディアンサマー広場には、また次回。
おまけ。
(2025年1月19日実施)