佐久海ノ口から甲斐駒の麓へ移動し、竹宇駒ケ岳神社登山口の駐車場にて仮眠。夜半、尿意を覚えて外へ出ると、澄み切った夜空に無数の星が散っていて暫し見惚れてしまった。翌朝も晴天が望めそうだ。
三連休の中日のことで、駐車スペースを確保できるか心配なので5時起きでとりあえず矢立石方面へ向かう。車止めのゲートの手前には車が一台。前日から入って、中でテント泊しているのだろうか。こちらも車を停め、お湯を沸かして朝食をとっている間に日の出となった。後続車がポツポツと現れ、駐車スペースは満杯に。皆さん手早く支度をして先行して行った。錦滝も岩間ルンゼも今日は混みそうかな〜。
7:12に歩き出し。雪は全くない。冬枯れで見通しが良く、甲斐駒の眺めを楽しんだ。
トラロープが張られた崩壊地を通過するとガンガノ沢は近い。少し歩くと、遠目に氷瀑の白が冬木立を透かして輝いていた。東屋に着いたら荷物を置いて、ガンガノ沢に架かる橋の上から錦滝を眺める。
車止めのゲートのところで話をした1パーティが錦滝へ行くと言っていたので順番待ちするつもりでいたのだが、誰もいないので拍子抜けする。落ち口の上へと目をやると、F2を登っている人の姿が見えた。ラッキー!では、スタート前に記念写真を。
写真のしおらしい姿から分かる通り、私は昨日から自信喪失気味である。S田氏が一番手でリード、終了点を作ってもらってから私もリードチャレンジ、ということになった。
下半分は巨大松ぼっくりみたいな変な形の氷に陽が当たってグズグズだ。スクリューを入れる場所に迷いそうだなぁ。でもそこは決断も行動も早いS田氏のこと、サッサと登って行った。
ロープを抜いて、次は私の番。松ぼっくりは斜度もないし段がいっぱいあるから、スクリューの設置場所には困るとしても登るのは易しいだろう。と思って登り始めたんだけどさぁ…
松ぼっくりの表面に無数にある松かさの一片一片にアックスをかけ、足を乗せて登ってゆく形になるのだが、かさの上部は丸い形でアックスをかけにくいし、かさ自体が皆少し外側に開いており足を上げようとすると膝に当たって邪魔である。まぁこれは短足特有の問題かも知れないが。かさとかさの間に空間が開いているのにもチョイとビビる。松ぼっくりを登り終えて見慣れた形状の氷になったらホッとした。
錦滝には左岸に巻き道があり、歩いて落ち口の上まで行くことができる。私が登り始める頃に現れた後続の2人パーティのうち、先輩格のお一人がトップロープを張りに登ってきていて、登り終えた私が懸垂下降の準備をするのを見守って下さった。写真も撮って下さって、嬉し恥ずかし。
私が降りたあと、彼等はトップロープを下ろして、私達はロープを左に振った。
情けない登りだったとは言え、とりあえず1つ目のノルマは達成できたので良しとしよう。。陽当りの良い林道に上がってお昼の大休止。
私がチンタラ登っている間に、朝には白く輝いていた錦滝がすっぽりと日陰に入ってしまった。日向ぼっこしていると日陰に戻るのが億劫になってしまうが…
大師匠の「今日の一本」の時間なので、行かなくては。左側の垂直のところかな。
大師匠は私の予想よりもっと左、岩に張り付いたベルグラにアックスを丁寧に決めてスタート。バンドのようになっている氷に乗ったら右にトラヴァースしていくのだが、岩壁は被っている上にアックスをかけられるクラックも無いので、ベルグラにそっとアックスの刃先を食い込ませて進む。が、一度ベルグラがガバッと落ちた。やっぱり、このレベルのベルグラはトップロープじゃないと危なくてチャレンジできないね。
続いてS田氏、センス&パワーで魅せます!
で、私は何をしたかと言うと…
大師匠が、ショボーンの写真を撮ってくれていたのは何故なのだろうか…
午後になって気温が下がり始め、落ち口の辺りでロープが凍り付き始めたらしく、難しいラインをトップロープで安全にトライするのが困難になってきた。S田氏が巻き道を使って回収しに行ってくれて、錦滝は終了。
まだ14時45分、帰るには早い。せっかくだから岩間ルンゼのF1を登りに行こう。ロープは一本で大丈夫だろう…、必要なもの以外は東屋にデポして。
東屋から岩間ルンゼ取り付きまでは6分。まだ登っているパーティがいるようで、少量の荷物がデポされていた。短い滝なので今度は先に私がリードで、上の写真で滝の左上にスックと立っている木に支点を構築して降りてくる計画でスタート。
上の写真で乗っ越したあと、斜度の緩い氷瀑が予想よりも奥へと続いており、目当ての立木も下から見た印象よりもずっと奥にある。こりゃ、50mロープ一本じゃ足りないだろうな。緩傾斜の氷瀑を登りつつ辺りを見回すと、左手前に残置ロープのかかった立木を発見。奥ばかり見ていて気付くのが遅れてしまったのだ。ロープが足りないかも、と思った時点ですぐに方針転換を検討するべきだったのに、決断が遅い。ビレイヤーからは、ロープ残り少ないコール。でも、もう手遅れなので奥の立木まで行って懸垂。
もしかしたらギリギリ長さが足りたりしないかな?と思って、斜度がキツくなる際まで降りていき、ロープを垂らしてみた。残念、やはり足りない。少し登り返して左手前の立木のところへ。うっかりロープに結び目を作って下ろしてしまったので、危うく引っかかって上げられなくなるところだった。焦っているとバカなことをしてしまうものだな。
ロープを落とさないように気を付けながら、奥の立木からロープを移す。丁度その頃、上から登攀を終えたパーティが降りてきた。邪魔になりたくはないが、焦って失敗してもいけない。何とか懸垂の準備を終え、下降開始。懸垂支点が当初の想定よりかなり左にあるので、上部のスクリュー回収に難儀しそうだと思っていたが、上で私を待っていて下さったパーティのお一人が(彼等はダブルロープで中央の立木から懸垂で下まで降りられるので)回収しますよーと言って下さった。お待たせした上にお手間もかけさせてしまって申し訳ない…、ありがとうございます。
残りのスクリューは自分で回収して降りた。奥の立木から手前の立木に懸垂ロープを移すのを、ミスをしないよう慎重にやり過ぎて要領が悪かったので、時間がかかり過ぎだと大師匠からお叱言。そりゃそうだ、もう16時をとうに回っている。S田氏が登る時間も無くなっちゃった。本当に申し訳ないです…
東屋に戻って荷物をまとめ、帰路につく。17時を過ぎても明るくて、随分と日が長くなったなぁ。
車止めのゲートへは17:53着。ギリギリ、ヘッデンを出さずに済んだ。車の台数を見るに、まだ降りて来ていないパーティもいるようだ。彼等はヘッデンだろう。
今日の機嫌直しお肉は、甲州街道沿いにあるトンカツ屋「かつはな亭」。知らないで入ったのだが、キャベツ、ご飯、味噌汁もおかわり自由という素晴らしいお店で、シュンとしていた気分も吹っ飛んだ。これで明日も頑張れそうだね(ちゃんと反省もしていますよ)!
(2025年2月23日実施)