山ちゃんは沢屋だけど寒いのが大嫌い。なのでY岸家の沢始めは例年5月末。お気に入りの水晶谷の幕場へ、今年は雁峠から向かってみることにした。これは一昨年の秋に台風で中止して以来お蔵入りになっていた企画なのだが、年越し山行のテントの中でチーちゃんが岩魚釣りをしてみたい女子だということが判明したため、再度実行することに。
作場平橋から一之瀬川沿いの登山道を行く。苔に混じってバイカオウレンの白い花が愛らしい。クリンソウも多いが見頃には少し早い。緩やかに高度を上げて行くにつれ汗が吹き出し、あぁ、また暑いシーズンがやってきたなと思う。いつのまにかエゾハルゼミの大合唱に包まれていた。
十数年振りに訪れた笠取小屋は幾分様子が変わっているかな?広々とした草地のテント場は変わらず。
明るく開けた笹原を雁峠へ向かう。落葉松の幼木が此処彼処に見られる。数十年前には落葉松林だったのが伐り出されたのか…また数十年後には落葉松林に戻るのかも知れない。
雁峠山荘は十数年前の記憶と変わらぬ姿に見えた。時が止まっているかの如く廃屋のままだった。雪が降らないとはこういう事か、と思った。
板が打ち付けてある小屋の脇を通ってブドウ沢の源頭の方へ少し下ると、左岸の笹原の中に車道の型があらわれる。
その昔、水晶谷の周辺で伐採した木を搬出するために作られたという道の名残がどこまで利用できるか。繁茂した馬酔木に進路を妨げられる場面もあったが、笹に覆われた車道は概ね歩きやすい。とは言え放棄されて久しいトラヴァース道は沢を横切る度に行き先が見失われてしまう。
しばらく進むと、踏み跡らしきものは散見されるも幅のある道型が見つけられなくなった。もう道は無いのかとも思えたので、歩きやすい場所を拾いながら進むことにした。
道が出来て、そして放棄されてから数十年が経過しているのだから、少しずつ崩壊してゆく斜面に道の痕跡を求めるのは難しいことだったのかも知れない。
不安定な斜面を踏みしめながら進んでゆく。思ったより時間がかかっているが、GPSで現在地を確認してみると尾根を乗越して古礼沢側の斜面へ移るポイントは近い。私がアタリを付けていた支尾根より手前に登り上がり易そうな斜面があったので、気合いを入れて登り始める。シーズン始めの身体に重いザックが食い込み、あっという間に息が上がる。
と、ここでメンバーから体調不良の訴えがあり、時間的には余裕があるので笠取小屋に引き返すことに。
名残惜しいけれど、大分様子が分かったので良しとしよう。次回は偵察に時間を取られず、順調に進めるだろう。
明るい内に笠取小屋に辿り着いて外のテーブルで一杯やっていると雨が降ってきたので、避難小屋に場所を移した。降ったり止んだりの雨が20時頃には本降りになった。
翌日は笠取山ハイキングをするだけだからゆっくり朝寝をするつもりでいたのに、小屋周辺を縄張りにしているらしい黄鶺鴒(キセキレイ)が夜明けとともに鳴き出して、すっかり目が覚めてしまった。
朝食を済ませて小屋から撤収したら、不要な荷物をテントに投げ込んで笠取山へ。
一歩登る毎に展望が開けてゆくその素晴らしさは、遡行が叶わなかったことを悔やむ気持ちを癒してくれた。
また、行こう。
ハイグレ2021年6月6日 19:26 /
今週、リベンジの計画がありますね。 チーちゃん、大物の写真、期待しています。