• 登山技術研究会アルペンブルーメ|東京都勤労者山岳連盟に加盟する山岳会|岩登り・沢登り・雪山登山が好きなアルパインクラブ|登山の基本技術を研究し指導者を育成する山の会|東京都練馬区を拠点に活動

再び 雁峠から古礼沢

笠取山周辺のハイキングは人気があるらしく土日は車を停められそうにないので、平日に予定を合わせて再び作場平橋にやって来た。先々週はコロナの為に閉鎖されていた駐車場が今日は開いていて、緊急事態宣言が解除された訳でもないのに不可解ではあるがありがたく停めさせていただく。前回より1時間ちょっと早く着いても最後の1台分のスペースだった。

快晴とあって放射冷却でひんやりとしていて、登るには快適な天候。エゾハルゼミも早起きで、登山口からずっと蝉時雨の中をゆく。予想通りにクリンソウが見頃を迎えていた。

サクラソウの一種で水辺を好む

笠取小屋で小休止し、雁峠へ向かう。草原に佇むズミの花が満開で、辺りに芳香を放っている。

今日は雁峠山荘の裏手からではなく、雁峠から廃道へアクセスするつもり。暫く見納めになる甲府方面を眺める山ちゃん。

古礼沢を詰めて稜線にでるまで、暫しのお別れ。

峠のベンチで小休止したら、クリンソウ咲き乱れるブドウ沢源頭を経て笹に覆われた旧水晶歩道へ。

最初のうちは車道幅

沢地形で道が途切れても前回偵察済みなので順調に進行。何本目だったか、大きく崩壊している沢に差し掛かったところで前回よりも登り気味に通過。既に車道の幅はないものの明らかな道を発見。

中ほどからは歩道幅

全く道ではない所をトラヴァースするよりも遥かに楽に歩ける。道を見失ったり又見つけたりを繰り返しながら進んでゆくと、馬酔木の林の向こうに青空が覗いた。

道の名残か

間もなく尾根に乗り、大休止。腹拵えを済ませたら、古礼沢への下降点を目指してシャクナゲを掻き分けながらの尾根下り。

序の口。この後はナゲ密度が濃くなった

僅かな距離ながらシャクナゲ藪には閉口。下降点に達したので、方向を変えて古礼沢へ向かう支尾根を下る。

急激な下りのスタート

旧い道に詳しいひとの調査によると、この支尾根上にも旧水晶歩道の痕跡があるそうなのだけれど、素人目にはせいぜい鹿道しか見出だすことが出来なかった。

なだらかな場所で一休み

広葉樹主体の森で大木も多く、キビタキやコルリの歌が響いて見上げると気持ちが良い。が、視線を足下に向けると林床の貧弱さは目を覆わんばかり。毒草以外の草も、若木も無く、十数年前の笹枯れも未だに回復していない。歩くには楽なのだが、このまま高木が寿命を迎えれば森がなくなると思うと切なくなる。

最後の急斜面を前に一息入れたら、眼下に見えている沢に向かって下って行く。山ちゃんが良いルートを見つけてくれて、最後までロープ無しで降りられた。

ガレと倒木で荒れている

待望の沢に辿り着いたけど、ここは荒れていて泊まりたくない雰囲気。水晶谷との出合に向かって下ることにする。

下ります

間もなく滝の音が響いてきた。落ち口から恐る恐る覗いてみる。沢下降の経験がなく、どうしたものやら見当が付かない。山ちゃんから、ド素人はすっ込んでろ、と言われる。右岸を巻き降りることになった。

巻き終わって、ザックを下ろして振り返ると山ちゃんが竿を出していた。

お腹と鰭が橙色の秩父岩魚です

続いてちーちゃん、待望の釣り指南タイム!

釣りをしない私は見学

今夜のおかずを確保し、目指す幕場に向かって沢を下る。悲しいかな、シーズン初の沢なのに調子に乗って重荷を背負ってきた私はヨロケていて、ちーちゃんは体力充分だけどロープワークが未だ不慣れ。呆れ果てたリーダーから、予定より手前でタイムアウトのコールが。

薪はたっぷりなんですが

普通は幕を張らないところなので整地が必要だったけれど3人ともハンマーを持っているので作業はガンガン進み、平らな幕場が出来上がった。因みに今回、私とちーちゃんのハンマーが役に立ったのは後にも先にもここだけである。

整地と焚火の火付けが済んだら、師匠と弟子は釣りに行ってしまった。残された私がテントを張り、動線上に倒れかかっている木を切って薪にし、焚火に薪を足しつつ、お湯を沸かして、野菜を刻む…当たり前のことなんだけど、要領が悪い上に非力なので時間がかかる。釣りから帰った山ちゃんは、幕場状況の進捗の悪さにお冠であった。雨も降らず、良い夜だったのだけれど。

朝早くに目が覚めたので、燻っていた火床を繕って炎を立ち上げた。陽射しが対岸の崩壊地を舐めるように降りてきて、樹々の葉が鮮やかな黄緑色に染まってゆく。師匠と弟子はまだ良く寝ているので、お茶をいれて静かな溪の朝を味わった。

師匠が漸く起きてきて、再び釣り指南タイム。

しばらく釣った後朝食をとり、幕場を片付けて出発。昨日の滝で再び釣り。

ちーちゃん、釣りました!

あとは古礼沢を遡行。重荷と倒木に邪魔されて私の足取りは重い。反省するも時既に遅しなので、諦めてトボトボと進む。時折、ナメが現れるが、あまり広くない谷の中に倒木がたまっているので歓声を上げるような美しさがない。

長い滑床を振り返る。ここは美しい

多段滝に差し掛かり、左を巻くことに決めて登り始める。

そもそも巻道があるのかどうか不明だが、ともかく我々はそれらしきものを見つけられず、随分と巻き上げられてしまった。滝を過ぎたのかどうかも様子が見えなくて判らないので、降りられそうな場所を求めて慎重に進んでゆくと本流にかかる滝と支沢が見えてきた。かなり上から見ているので、果たしてその滝が立っているのか寝ているのか判断がつかない。私はこれ以上巻き上げられるのが怖くて、何回か懸垂して沢床に降りたいと主張。山ちゃんは、懸垂支点になる木までの区間に良い支点がなく危ないし、あの見えている滝が登れなかったらどうするんだ、と難色を示す。暫く逡巡した後、山ちゃんが中間支点を取れる木の根を見つけ、降りることに。

先頭は怖いよね。山ちゃん、ごめん。

降りてみると、滝は立っていなくて安堵。左側を通過し、ザックを下ろして見上げると我々が巻いた場所が遥か上にぃぃ〜!ド素人の私とちーちゃんは、暫し呆然と眺めたのだった。

山ちゃんが危ないと言ったわけが分かった…

巻きの難しさを痛感しつつ腹拵えをして、再び古礼沢を遡る。滑滝は綺麗なのだけれど、いかんせん倒木が多い。

倒木が少なくて植生が豊かだったら、どんなにか美しいだろう。

遅々とした歩みで源流に近づくにつれ流れは細く、そして倒木に加えてガレが酷くなってくる。

標高約1,700mの二股は古礼山へ突き上げる本流へ行きたいところだが、雁峠寄りの登山道に出られる左の支沢で近道をする計画だった。いざ二股に着いてみると本流はガレに埋まっていて、とてもじゃないが詰める気になれない様相だった。

ちーちゃんの背後が本流。ガレの川となっている

左の支沢に入る。もう16時になってしまった。朝が遅かったこと、巻きを失敗したこと、そして何より私が身の丈に合わない(文字通りにね!)大荷物を背負って来たために速く歩けないことを後悔しつつ、とは言えもう先は見えているし日も長いからまぁ大丈夫だろう、などと開き直って歩いていると先をゆく2人の会話が耳に入ってきた。釣りの助言なのか、はたまた獣道を見つけるコツなのか、師匠は「岩魚の気持ちになる」「獣に成り切る」などと仰っているようだった。

可憐な花に暫し癒される
稜線が見えた

植生が貧弱なので詰めの藪漕ぎも無い。完全に棒と化している私の両脚には都合が良かった。18時、登山道へ到達。

道はありがたきものなり

時間が遅いので笠取小屋に泊まることを会に連絡し、沢装備を解く。濡れ物が入ってザックは一層重くなったが、雁峠への登山道は概ね下りなので何とか耐えられた。

日が暮れてきた
燕山の石楠花

燕山の頂を過ぎた辺りでヘッデンとなる。雁峠への急な下り坂から甲府盆地の夜景が見えた。

笠取の避難小屋にたどり着いたら、残っている食糧と酒でささやかな夕餉。私は食欲もなく、寝床を拵えたらバタンキューと寝てしまった。

翌朝は曇天

一晩休んだら元気になって、駐車場まではあっと言う間。こんなに近いのに、昨夜は歩く力が残っていなかったのだ…。

土曜の朝なので駐車場は既に満杯、入り切れずに路肩で様子を見ている車もある。トイレと簡単な身支度だけ済ませて、早々に車を出す。

飯能に出て食事をして、飯能駅でちーちゃんとお別れ。

山ちゃん、ちーちゃん、私の足が遅くてお待たせし通しで申し訳ありませんでした。余計な荷物を減らして、脚を鍛えておきます。

コメント一覧

ちびのすけ2021年6月29日 10:55 / 返信

春から登攀具を背負ってあちこち登っていたので、重荷でも大丈夫だろうと高を括っていたのだが、川の中を歩き、倒木を潜り抜けるのは話が違った。下山遅れとなってしまい、非常に反省しております。

ハイグレ2021年7月1日 07:13 / 返信

チーちゃんも釣れて良かったね。

マタギを目指して修行中2021年7月1日 21:24 / 返信

なかなかワイルドな行程で他人事としては楽しそうな.. 所々、M姐の嘆きの声が聞こえてくるかのような文章が素敵で、 苦労はしたけど、やっぱり楽しかったのだろうなと想像しました。 ちーちゃん釣れてよかったね〜!中毒にならないことを祈っています。

happyhappa2021年7月5日 00:41 / 返信

古礼沢も水晶沢も有名なのに、その方面に行く機会もなく、あ~こんな感じなんだって想像しながら拝見しました。 山ちゃんの透明ウチワが使いやすそうです。

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