7月最初の日曜日、日原川の岳嶺岩そばで労山の都連盟救助隊の訓練がありました。沢で負傷し自力で移動できなくなった人を、安全な場所まで搬出するという想定です。
前日に降雨がありましたが、あまり増水していなくて良かったです。まず、チロリアンブリッジのロープを2本、張ります。
大木にスリングを巻き付けて支点を作り、ロープをセット。
此岸の支点も同じく大木にスリングで作成していますが、ロープの張りを調節できるようになっています。
上の写真のデバイスは、大きな荷重(=要救助者)がかかっていてもロープを張り込んだり緩めたりをスムーズに行える物です。(小さなデバイスだと、大きな荷重がかかるとロックしてしまう。)
ロープが1本だけだと、もし切れたら危ないので2本です(*追記あり)。上下それぞれのロープに付けた滑車は安全環付きカラビナで連結されています。下の滑車には、リギングプレートを安全環付きカラビナ2枚でバランス良く接続します。そして、リギングプレートと要救助者のハーネス(簡易ハーネスは不可)のビレイループを、安全環付きカラビナ2枚で連結します。
下のロープの進行方向側に、握り易いタイプのアッセンダーをセット。スリングと安全環付きカラビナで要救助者のハーネスと連結します。足を怪我しているけど腕は使える場合、このアッセンダーを使用して自ら進むことが出来ます。バランスを取る助けにもなります。
移動する滑車に指を引き込まれるといけないので、滑車のそばに手をおかないように注意。
到着したらロープを緩めて、要救助者のハーネスをチロリアンブリッジから外します。出発時も同様で、3枚前の写真では要救助者役の隊員が立ってセットを行っていましたが、実際の救助の場面では、要救助者は地面に座り込んでいる状態かも知れません。ロープを緩めて低い位置でセットしてから、ロープを張り込む必要があります。そのために4枚前の写真にあるようなデバイスがあると便利です。
ロープを張り込む際に、楽にロープを引けるようにアッセンダーと滑車を使って3倍力にしています。
ですが、不肖Y岸(嫁)は3倍力にしていてもロープを引く力が足りなくてお役に立てず。やはり救助活動には知識と技術に加え、逞しい体力が必要です。私に出来ることは限られるな…。
要救助者は体力を消耗していて、自力でアッセンダーを使って移動するのは無理かも知れません。その場合、両岸に新たに設けた支点から、新たなロープをリギングプレートに連結します。(たくさん穴が空いている大きなリギングプレートが便利な場面です。)
両岸の支点でそれぞれロープを安全に操作(確保器具を介してロープを送り出す/引き込む)して、チロリアンブリッジにセットされた要救助者を移動させます。
真剣に訓練しなきゃいけないんだけど、正直、これは楽しかったです…!
これにてチロリアンブリッジでの渡渉訓練は終了。の筈が、山ちゃんが「ロープの上を渡りたい」と言い出して…
ひっくり返るだろうから決定的瞬間をゲットしようと思って動画を撮ってたんだけど、結局ひっくり返らずに渡り切ってしまった。すげえな山ちゃん…ていうか膝を怪我してるのに何やってんのよ?
お昼休憩を挟んで午後は、救急隊が来られる上の道まで要救助者を引き上げるという想定で訓練をします。引き上げ時に落石を起こしての2次事故を防ぐために、引き上げの動線上の石などをなるべく取り除いてから訓練を始めました。
まず支点にする大木まで登り、ロープを2本セット。1本はバックアップです。斜面の下では、ストレッチャーに要救助者の代わりとなる重石やロープなどを詰めてしっかり梱包します。スリングと安全環付きカラビナでストレッチャーとロープを連結したら、上の支点から引き上げます。私は下にいて見えなかったけれど、3倍力で上げていただろうと思います。下にいる人も、ストレッチャーが障害物に引っかからないよう介助しました。
次に、動線の上にチロリアンブリッジを張って、ストレッチャーを浮かせ気味に引き上げ。この方が段差をスムーズに越せます。
4月に実施した岩場での搬出訓練でも、引き上げは行いましたが、沢の斜面で行うのはまた状況が違いますね。まだまだ慣れないことばかりですが、少しずつでも覚えていきたいと思います。
皆さま、どうもありがとうございました!
<追記> チロリアンブリッジのロープを複数本にするメリットは、ロープが切れるリスクに対応できるだけではなく、荷重を複数本のロープに分散することによってロープ1本あたりの伸び率を抑えられることもあります。
伸び率を抑えることによって、チロリアンブリッジで移動中に、荷重によってロープが下がり過ぎて地面や水面についてしまわないように、高さを保つことができます。ロープの本数が多いほど高さを保てるということになります。
さすらいのタヌキ2023年7月5日 23:44 /
チロリアンブリッジの謎が解けました、この技術ですね!