前日の夕方、小屋の前のベンチでアイゼンを外している時に山ちゃんが温度計を見せてきて「これ何℃になってる?」と訊いてきた。非常にコンパクトな温度計であるため本人は老眼で目盛りが見えず、私もコンタクトレンズをしていると老眼状態なので見えず、大師匠(以下略)…で正確には読めなかったが、かなり冷え込んできているようだった。
小屋の中はポカポカなので、つい外の気温のことは忘れてしまう。お布団には湯たんぽも入っていて寝心地が良いので、朝が来ても中々起きられない。少々出遅れて朝食会場へ。山ちゃんのご飯が秒で茶碗から消えたのを見て大師匠はウケておられた。
部屋に戻って荷物を整理したら、再びアイスギャラリーへ。小屋の外に温度計が設置されているのを見つけた山ちゃんが、-15℃だと言う。八ヶ岳で冬の朝ならこんなもんか…などと思いながら歩き始める。アイゼンを着けて行ったので前日より随分早くF1に到着。予想通り貸し切りで、いっぱい練習できそうだ。
早速ザックを下ろして支度にかかるが、晴れの予報に反して陽射しがなく、細かい雪が降っている。その上、昨日は殆どなかった風が谷の奥から吹いてきて、物凄く寒い。
再び大師匠にリードしていただいて、まず昨日の復習をしたら、次のステップへ。
★対角にバランスを取って、効率良く登る★
・どちらの手から始めても良いのだが、とりあえず右手で高い位置にアックスを決める。左手は高く上げずにバランスを取っていれば良い。
・高い位置に決まった右手のアックスにぶら下がるように右腕を伸ばしたまま、足の方へ視線を移す。
・次に上げるのは左足。上げる前にスタンスを良く見て、なるべく右手のアックスの真下で高いところを探して。見定めたら、腰を落としたまま、左足を良く見ながら上げる。右足はまだ上げず、そのままで。
・左足のスタンスがしっかりと決まったら、右手のアックスと対角にバランスを取りながら立ち込んで身体を上げる。右足はスタンスに上げたり前爪を蹴り込んだりせず、右側の壁に軽く当ててバランスを取るだけ。左手もまだ上げなくて良い。
・左足を真っ直ぐ伸ばして、腰を氷に近付けて。上体を軽く反らせるようにして胸の前を広く開け、上方を良く見て次にアックスを打ち込む場所を見定める。なるべく高い位置が良い。
・見当がついたら、今度は左手を伸ばして、なるべく真上の高い位置にアックスを打つ。その後の流れは、左右が入れ替わるだけで上記と同じ。
この一連の流れを、氷瀑の低いところで反復練習する。
風も粉雪も中々止まず、アックスを握る指の感覚がなくなってしまい私は一旦ギブアップ。−15℃だったもんなぁ。インナー手袋の指先が破けていたから余計か。大師匠のカメラは低温でダウン。Y岸家も寒すぎてスマホを出す元気がなく、写真がないわけ。
山ちゃんの苦手ポイントは、足の位置。ドッシリと踏ん張りの効く立派なガニ股は、意識的に内股にして、上のアックスの真下にポイントすべし。
私の苦手ポイントは色々あるが、とにかく悲惨なのはアックスの振り方。昨日、得物を使う私を初めてご覧になった大師匠が、堪え切れず失笑を漏らすのが聞こえてしまったし(涙)。素振り百回でしょうか。
指先の血流が戻ってきたら、練習を再開。今度は氷瀑の下の方だけでなく、行ける所まで登ってみよう。
★無理せず安全に登るためのポイント★
・今日やった対角登りと、昨日やった手足を並置する登り方を、その場に合わせて使い分けながら。
・氷瀑表面の小さな凹部(雪が溜まっているのが目印)の奥を狙ってアックスを打つと楽に決まる。(私は奥を狙っても手前の盛り上がったところに当たってしまい、氷を割ってしまった…)
・足が滑らないようにするためには、前爪をスタンスに乗せるor蹴り込む際に足首をダランとせず、緊張させる。そうすると、爪先が上がって前爪が上向きになった状態で足を決められるので、いざ立ち込む時に安全。(前爪を決めた後にかかとを下げるのは、前爪が刺さっている穴を広げることになるため危険。足は決めたら動かさないのが安全。)
・アックスを持った手はずっと上げている状態になるので、血が行かなくなって冷えてくる。アックステンションして手を一旦下げて、レストしながら指先に血流を戻してあげればOK!
二人とも、どうにかこうにか上まで登れるようになってきた。私のアックス振りは基礎練習を重ねないと改善しないので置いておくとして、だ。山ちゃんは別人のようにクライミングらしい登り姿になったので驚いた。
昼にもなると少しは気温が上がってきて多少楽になったが、帰る時間が近づいてきたのでボチボチ撤収。小屋へ戻って、寒くて行動食を食べずにいたのでペコペコのお腹に食堂の美味しいボルシチやビーフシチュー、Y岸家は生ビールも流し込む(大師匠すみません)。そして送迎車に再び乗り込んで夏沢鉱泉を後にしたのであった。
茅野駅から府中本町駅までご一緒した車中で今度はG4にも行ってみたいね、などと話しながら帰ってきたのだが、翌日大師匠から「G3だと思って登っていたがG4だった」とのご連絡が。全員初めてで気が付かなかったのだ。
手前に踏み跡があったか山ちゃんに訊いてみたら、薄っすらとあったと言う。私と大師匠は踏み跡に気付かなかったし、釣り師で踏み跡に目ざとい山ちゃんは、惜しいことにアイスギャラリーの位置関係を把握していなかった。ネットでG3の写真を探してみたら、小ぢんまりとした傾斜の緩い氷瀑の連続だったので「間違ったおかげで良い練習ができて良かったね」と大師匠。
2日間の練習で課題が明確になったので、私は素振り、山ちゃんは近所のボルダリングジムで対角登りの復習などして、次の機会に備えたいと思う。大師匠、今回も沢山教えていただきありがとうございました。今後ともどうぞ宜しくお願いいたします!
(2024年1月16日実施)
happyhappa2024年1月31日 09:18 /
おふたりとも大進歩で、これからうんと楽しめそうですね。うらやましいです。