• 登山技術研究会アルペンブルーメ|東京都勤労者山岳連盟に加盟する山岳会|岩登り・沢登り・雪山登山が好きなアルパインクラブ|登山の基本技術を研究し指導者を育成する山の会|東京都練馬区を拠点に活動

甘くなかった…谷川岳入門(前半)

3年前に烏帽子沢奥壁南稜を雨で敗退して以来、あまり気が向かずにいた谷川岳の岩壁。そもそもクライミングが中途半端なまま沢シーズンに突入してしまうのが通例だったのだが、今年は大師匠とのご縁で岩づいている。5月末の週末、登れず仕舞いだった谷川岳に再チャレンジする機会をいただいた。

どんより

土曜は榛名黒岩でクライミングをしていた大師匠とエミコリンに遅れること2時間弱、谷川岳ベースプラザ入りした頃には雨は降っていなかった。車中で軽く飲んで就寝し、4時起きで支度をして外に出てみると路面が濡れていて少々落胆する。山はガスの中だ。しかし雨は上がっているし、霧だが薄陽も射すという予報であるので出発してみる。登山指導センターに計画書を提出したのが丁度5時。

マムシ岩の表面は乾いていた。この調子でどんどん乾いてくれることを願う。やがて雪渓を抱いた一ノ倉の岩壁が見えてきて、さてテント村の様子はどうか。テントの数は少ないが、この天候で既に入山しているとも思えないので、予報がパッとしないからそもそも人が少ないのか。出合の近くまで来てみると、様子眺めをしている人が多い。

前回は道のすぐ向こうから雪渓だったけど。

ボチボチ歩き始めた2人パーティに続くようなタイミングで6時少し前に我々もスタート。前回(2021年5月末)に比べて雪渓が後退しており、景色が全然違う。

険しく厳しいイメージの谷川岳の岩壁は、その懐に入って見ると意外にも高山植物の愛らしい花々に彩られている。前回訪れた際に印象的だったヒメイワカガミの可憐な白い花、もう一度見たいなぁ。

6:10、大師匠に続いて夏道から雪渓に降りる。私の頭の中には花と景色と空模様くらいしかない。大師匠は帰りのことを考えて振り返り、目印となる岩の形を記憶に留めてから先に進む。上流に向かって雪渓の右側には、コップ沢から崩落してきた巨大なブロックがゴロゴロしている。6時半過ぎにテールリッジ末端に到着し、チェーンアイゼンやストックなどをデポ。衝立スラブ側に少し雪渓を登ってからテールリッジに登り上がる。前回より雪渓の高さがなく、下部の岩肌は滑り易くて少々苦労。

座って休めるくらい平らで広いところまで登って朝食休憩していると、後続が追いついてきた。1パーティは中央稜へと先行して行き、もう1パーティは南稜の予定だがガスが取れないのでどうしようかと迷っていたが、行ったようだ。確かに烏帽子岩は霧の中だが、我々の目指す衝立岩中央稜は良く見えている。足下の岩も乾いているし。

余談だが今回の私のアプローチシューズは、沢用のラバーソール靴。テールリッジに超オススメである(沢をやる人限定だけど…)。お目当てのヒメイワカガミを含む高山植物の花を愛でながら進み、8時半過ぎに中央稜の取付に到着。先行パーティもいるのでのんびり支度をする。不要な荷物をデポして、トイレも済ませて。

中央稜の取付から1ピッチ目を見上げる。8:47

<1ピッチ目 40m 私リード> 斜度がきつくなくホールドもハッキリしており簡単。ランナウトし過ぎるので、少し傾斜が出てくる後半にはカムを入れた。先行パーティと同様に、最初に目についた支点でピッチを切った。大師匠に続いてエミコリンが終了点まで登ってくると、大師匠は私を通り越し、2ピッチ目の開始地点に向けて左へトラヴァース。私が手前でピッチを切ってしまったので、修正して下さったのだ。

このピッチの反省点。(1)次のピッチの登攀ラインを考えることもせず、とりあえず目についた終了点に飛びついた。もう1つ奥の終了点を使うべきだった。(2)フォローの2人を同時にビレイするロープ操作が遅かった。(3)トラヴァースしてゆく大師匠のロープを出してゆく動作が遅かった。

<2ピッチ目 20m 私リード> 左トラヴァースを終えると、ガタガタした岩の間から草がボウボウ生えているようなルンゼの直下。乾いているので簡単、落石だけ注意しながら短いルンゼを直上。本当は、そのまま右トラヴァースから入る3ピッチ目まで継続したかったので、右トラヴァースのルート指示と屈曲するロープの流れを補助するために大師匠がルンゼ直下にいて下さった。が、先行パーティがルンゼの最上部にある終了点でピッチを切っていたので、勢い我々もピッチを切ることになった。終了点を見ると、支点の片方がグニャグニャに腐ったハーケンだったので過剰反応してしまい、バックアップを矢鱈に取って時間を浪費。これが2ピッチ目の反省点。過剰安全はタイムロスの分リスクとなる。余計にピッチを切っただけでもタイムロスしたので尚更だ。

<3ピッチ目 25m 私リード> 件の右トラヴァースは写真の通りの傾斜なのでスリリングだが、支点はたくさん取れるし、落ち着いて探せばホールド・スタンスとも豊富。トラヴァースを終えたらフェースを直上。難しくないが、かなり大きな石も浮いているので落石を起こさぬよう神経を使う。このピッチでの反省点は、フォロー2人を同時に上げるロープ操作が遅かったことくらいかなぁ。

<4ピッチ目 30m 私リード> いよいよ核心ピッチの登攀。大師匠アドヴァイスは、(1)ヌンチャク・アルパインヌンチャクを沢山持って。(2)お助けを掴んでも良い。(3)上部のチムニーは抜け口が難しいので、左のフェースに出ると易しい。

ヌンチャクとアルパインヌンチャクを借り集めてスタート。緊張感のあるフェースを、残置支点を目で追いながら右寄りに登ってゆく。いくつものハーケンから黒ずんだ紐がぶら下がっているのを完全無視。後から、あれがお助けだったのか?と気が付いたけど、ボロ過ぎてお助け感がなかったので仕方がないかも。

中間支点にヌンチャクもカムも沢山使いながら慎重に登ってゆくと、チムニーが現れた。私はどうも内面登攀が好きらしくて(もちろん簡単なやつね)、夢中になってしまう。フェースへ出ると易しいという助言を完全に忘れ、時間も忘れ、どう身をこなせば身体を上げられるかしか考えない。チムニーの内壁右側に背中を付けて、左側に足を張って、アタックザックの薄い生地をザリザリ言わせながら躙り上がった。何とかキツいところを抜けて「面白かったな」と独り言が出、上に目をやると唐突にそこが安定したテラスだった。

付かず離れずで先行しているパーティのセカンドの彼が「よくそこを登ってきましたね」と言うので、自分も登ったのだろうに何故そんなことをと訝しみつつ「いや〜、だいぶ悩みました」と答えた。間もなくフォローで登っていった彼と入れ替わるように支点構築をし、2人を上げる。

傾斜があるので下の様子が見えない。手際が悪いなりに懸命にロープを上げる。やがてチムニーの中にエミコリンの姿が見えてきた。テラスに登り上がった彼女に「フェースに出ると楽だという助言を忘れたでしょう」と言われてハッとする。チムニーの中をロープが通っているので仕方なく、大師匠も苦笑しながらチムニーを上がってきた。

このピッチでの反省点は、自分の登攀力への挑戦が優先され時短の意識がなくなってしまったこと。A0なしの達成感はあるが、「お助けを掴んで良いから」という助言はつまり余計な時間をかけるなということ。「フェースへ出る」も然りだ。ロープ操作は少しずつ慣れてきたけれど、まだ待たせている。要するに私は、全体的にトロい。

そんなこんなで前半ピッチが終わり、リードのお役御免となった。緊張感を緩めて花の撮影などする。予報どおりに時折薄陽も射し、悪くない天候だが時既に正午。予定よりも時間がかかってしまっている。

〜後半へ続く〜

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