’24大師匠アイスクライミング・クリニック、11日目にして最終日の今日は南沢大滝へ。状況が許せばリードするつもりだ。5時に起きて支度して、しっかり朝食も取って、車で駆けつけた太田山岳会のJ子さんも加わって6時に八ヶ岳山荘発。昨日、酔っ払う前にチェーンを装着しておいた大師匠のエスティマで美濃戸まで。
今回はそこそこ寒い予報なので、靴の中敷きタイプのカイロを入れて出発。のんびり歩いて1時間50分、見えてきた南沢大滝は遠目に見てもデカい!
先着していたMちゃん達3人組と、私達と同時に到着した3人パーティが早速登り始める様子。私もリードしようと心を決めたけれど、寒いし、とりあえずトイレに行ってからだな…
見通しの良い地形とケツの冷たさに苦しんだ後トイレから戻ってくると、リードしていたSくんが腕が冷えて痛いと言っている。それならばと、私は靴下用カイロをグローブの中間に貼り付けてみた。
寒さ対策は万全、大師匠のアドヴァイスでスクリューもかなり多めに持った。アックステンションしまくって休みながら登れば良いさ、ダメなら途中でピッチを切って降りてくれば良いのさ…と自分に言い聞かせて、山ちゃんにビレイをお願いしてGo!
前日の角木場の氷柱の貧弱さからは想像できないほど立派な今年の南沢大滝だが、氷瀑の左側は華奢な氷で構成されているので、左寄りにスタートしてしまった私は氷がより安定している右方へと移動しながら登っていった。
右の方へ来てみたけれど、昨日までに登ってきた氷と感じが違って少し戸惑う。間近でみる南沢大滝の表面は、面と言うよりも互いに癒着した小さな丸い膨らみの集合体という感じで、隙間も沢山あり、どこにアイゼンの刃を置こうか、どこにスクリューを入れようか迷ってしまった。周りの人のスクリューを見てみたりして、どうにか自分を説得して、再びソロリソロリと登り始める。隙間が多いのでアックスをかける所は沢山あるように見えるが、荷重をかけたら崩れそうな所もあるので適所の見極めは慎重に。
手持ちのスクリューは、新しいモデルは5本しかなく、残りは旧型。氷瀑の後半、傾斜がキツくなる場面で新型を使いたいので、傾斜の緩い下部では旧型を使ったが、寒くて氷が固いので片手では回せず両手でキコキコ…
新しいスクリューは片手でも回せたので、道具の進化を実感した。傾斜がキツくなってくる後半、慎重にアックステンションして、場所選びに悩みながらも落ち着いてスクリュー設置できた。前半に比べてスクリューの間隔が露骨に近くなっているのはご愛嬌。
★リード中に気を付けたこと★
・腕が少ししんどくなってきた時点で早々にレストしよう。パンプする or 冷え切る前にさっさとアックステンションして。
・インナー手袋に貼ったカイロの助けも借りて、レスト中に指先まで血流を戻して。血行が悪いまま続行すると手の感覚がなくなって、登れなくなる。
・前日に氷柱でキツい体勢から極力高い所にアックスを打っていたのに比べたら、南沢大滝で高い所にアックスを決めるのは楽なはず。手を高く→足を高く、の原則をなるべく守って動作の数を減らして、大滝の途中で力尽きないように。
・大滝のリード登攀ビギナーなのでギアが多めだが、冬手袋をしてギアラックやツールホルダーからギアを取る事に、見ないでサッと取れるほど習熟していない。中盤以降、レストして余裕がある時に、次に使うギアを取り易いところに再配置しながら核心部に挑んだ。
落ち口を抜けると、両岸を冬木立に縁取られた氷の白が青空に映えていた。広々としたナメ滝の上を吹き渡る風が、あと少しで大滝のリードを達成できる高揚感にシンクロする。沢の上流はどんな様子であったか、もう忘れてしまったくらいだから取り立てて書くほどの特徴も無かったか。舞い上がり気味な気持ちを抑えて最後の仕上げへ。残置支点のある左岸の立ち木にスリングを巻き付けてトップロープの支点を作成し、懸垂で降りた。
時間がかかったので、ビレイしていた山ちゃんは身体が冷え切ってしまっていて可哀想だった。ゴメン。おかげで無事にリードできたよ、ありがとう。私はと言えば、太々しく肝を据えて登っている自覚だったが、やはり緊張していたようでロープを解いたら気が抜けてしまい、長い休憩モードに。
大師匠からは、ゆっくりではあったが危なげなく、安定して登っていたとのコメントをいただいた。
1月には初心者同然だった私が同シーズン中に南沢大滝のリードまで行けるとは思っていなかったと、上達を褒めて下さった大師匠。
上達できたのはひとえに大師匠のご厚意と、天候にも恵まれて11日間を数えた今期アイスクライミング・大師匠クリニックのおかげです(下記参照)。
・手足の基礎ムーヴ https://alpenblume.club/?p=25921
・対角登りの基本 https://alpenblume.club/?p=26227
・爪先革命でハングも https://alpenblume.club/?p=26356
・リードの事前練習 https://alpenblume.club/?p=26429
・他人の作った凹凸がない所を登ってみよう https://alpenblume.club/?p=26499
・リード実践と氷柱 https://alpenblume.club/?p=26588
・大滝リード予行演習 https://alpenblume.club/?p=26684
・難しい氷柱で登攀力アップ https://alpenblume.club/?p=26787
・大滝リードデビュー!(当記事)…と進んできたってわけ。
13時もとっくに過ぎた頃、ようやく登る気力が戻ってきたのでSくん達のトップロープを借りて1本。リードの時は大胆なムーヴを選択できなかったのが良く分かった。その後もみんなで交代しながら。
他のパーティはボチボチ撤収し始め、相次いで下りて行った。一番乗りで最後までいる私達、まぁ大所帯だからねぇ。
大師匠から「回収便の体力を残しておいてね」と言われたけど、大丈夫。前日の氷柱3トライに比べたら、全然疲れておりません。回収便の登りはどうせトップロープなので速さ重視で、少しでも足に頼れる時はアックステンションせずに腕に軽いレストを入れながら。リードとは比較にならない速さで、私にしては手際よく回収完了。
荷物をまとめて、15時半頃に大滝を後にする。1時間15分ほどの歩きで美濃戸に到着。大師匠の車に乗り込み八ヶ岳山荘まで帰ってきたのは17時半頃だったが、まだ明るい。こんなに日が長くなって、そろそろアイスクライミングシーズンも終わりだなぁ。J子さんが「富士山に行きましょうよ~」って言ってたけど、Y岸家にはそんな体力ないし。
来期の目標は、大同心大滝です。無雪期にも登攀力やロープワークの習熟度を上げなければ。大師匠、今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。
(2024年3月3日実施)